令和時代の政策創りと新たなるパブリック・キャリア

令和時代の政策創りと新たなるパブリック・キャリア

新時代のガバナンスを求める秋—政策起業家キャリアと成熟した政策過程を日本社会で築く


「政策構想力のある政策起業家を育て、活躍の機会を与える(中略)。自分たちが公共と政府をつくるのだという国民の当事者意識と参画意識に、民主主義社会の政策起業力は胚胎するのである。」

(船橋洋一『シンクタンクとは何か:政策起業力の時代』中央公論新社、2019年、276頁から抜粋)


日本の政策創りは、どこへ向かうのだろうか。そして政策・社会課題を解決し、公共(public)のために働くというキャリアは、果たして誰によって担われるのだろうか。

ここまで見てきたケースから考えても、少なくとも霞ヶ関を軸に、政・官・特定業界で「閉じた」政策過程は過去のものとなりつつある。

今後は行政に加え、NGO/NPO、アカデミア、シンクタンク、営利企業まで、社会の様々なアクターが、相互に知見・構想・アイデアを戦わせ、その実現のため業際・学際的に連携する—開放的かつ競争的な政策創りの手法が求められる。

そのために私達は「政府/公共のために働く≒行政官/政治家になるしかない」との方程式を捨て、「業界・業態を超えた多彩な政策プロフェッショナル≒政策起業家」という新たなパブリック・キャリアのモデルを、日本社会で見出していかなければならない。様々なカタチをとる政策起業家がこのプロセスに参画する中で、伝統的にこの仕事を続けてきた行政官・政治家も、自らの新たな姿を模索することができるようになるだろう。

元号が平成から令和にかわり、新しい時代を迎えた日本。未曾有の少子高齢化から高まる地政学的リスクまで、複雑性・不確実性を増し続ける政策課題に立ち向かうため、多彩な政策起業家達の創意工夫が実を結び、新時代に相応しい新たな政策過程が成熟する―喩えるならば、ガバナンスの秋を迎えなければならない。

そこに至る道のりには、様々な課題が横たわっている。公務員の人事・評価制度や、これまでの霞ヶ関の政策立案手法の職人芸化の問題にはじまり、広くは大学や在野のシンクタンクの社会的役割、更には政策起業家となりうる人々のキャリア形成上のロールモデルの見えづらさ、報酬などのインセンティブをめぐる論点までをも含みうる。

「21世紀日本の政策起業力プロジェクト」は今後、調査研究・シンポジウム等を通じて、そうした論点を明らかにしつつ、「日本の政策過程/ガバナンスの成熟」とそれ支える「政策起業家キャリアを確立・育成」する目標に向けメディア発信、政策提言等を展開していく。

          (API 21世紀日本の政策起業力プロジェクト事務局)

主要な参考文献一覧

城山三郎『官僚達の夏』(株式会社新潮社、1980年)

田中秀明『官僚達の冬―霞が関復活の処方箋』(株式会社小学館、2019年)

新しい霞が関を創る若手の会『霞が関維新―官僚が変わる・日本が変わる』(英治出版株式会社、2009年)

駒崎弘樹『”社会を変える”を仕事にする―社会起業家という生き方』(筑摩書房、2011年)

Forbes Japan 編集部たった6年で全国2400カ所に広がった「小規模保育」の仕組み」2017年6月29日 <https://forbesjapan.com/articles/detail/16727/1/1/1>(2019年5月1日アクセス)

周藤 瞳美「政策のための科学」とは何か? #1:白石SciREXセンター長へのインタビュー」Academist Journal <https://academist-cf.com/journal/?p=10166> (2019年5月1日アクセス)

金子 将史「日本の外交・安全保障政策の知的基盤をいかに卿かするか―政策シンクタンクのあり方を中心に―」政策シンクタンクPHP 総研『PHP Policy Review』 Vol,6, No.51, 2012年7月  <https://thinktank.php.co.jp/wp-content/uploads/2016/05/policy_v6_n51.pdf>(2019年5月1日アクセス)

中曽根平和研究所「研究幹部 | エキスパーツ」<http://www.iips.org/experts/index.html>(2019年5月1日アクセス)

国分俊史、福田峰之、角南篤編『世界市場で勝つルールメイキング戦略―技術で勝る日本企業がなぜ負けるのか』朝日新聞出版、2016年

「”日本版NEC”創設を 自民議連が提言へ サイバー攻撃対応など」 日本経済新聞(電子版)、2019年3月20日<https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42673880Z10C19A3PP8000/> (2019年5月1日アクセス)            

ジョン ・キングダン『アジェンダ・選択肢・公共政策―政策はどのように決まるのか』笠京子 訳、勁草書房、2017年8月 (原書第1版、1984年刊行)

Neomi Frisch Aviram, Nissim Cohen, and Itai Beeri,  “Wind(ow) of Change: A Systematic Review of Policy Entrepreneurship Characteristics and  Strategies,” Policy Studies Journal, Vol.0, No.0, 2019.

松下典子「日本が空飛ぶクルマを進めるべき 経産省若手官僚が狙う産業革命」ASCII Stratup, 2018年11月06日 <https://ascii.jp/elem/000/001/766/1766020/>(2019年5月1日アクセス)

経済産業省「僕らはなぜ空を目指すのか:空飛ぶクルマプロジェクトチーム座談会【前編】」経済産業省METI Journal、 2019年4月17日 <https://meti-journal.jp/p/5424/>(2019年5月1日アクセス)

経済産業省「移動が変わる、霞が関も変わる:空飛ぶクルマプロジェクトチーム座談会【後編】」経済産業省METI Journal、2019年4月18日 <https://meti-journal.jp/p/5466-2/> (2019年5月1日アクセス)

藤沢烈『人生100年時代の国家戦略:小泉小委員会の500日』東洋経済新報社、2017年

加藤藍子「20代国家公務員の6割強が「兼業したい」——“忖度”生むキャリアの一本道を避けるためにも公務員は外に出よう」 Business Insider Japan、2018年4月18日 <https://www.businessinsider.jp/post-172855> (2019年5月1日アクセス)

船橋洋一『シンクタンクとは何か:政策起業力の時代』中央公論新社、2019年

(以上)

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