「Mr.復興」 藤沢烈氏が語る、変わる日本の社会課題と政策人材(後編)

「Mr.復興」 藤沢烈氏が語る、変わる日本の社会課題と政策人材(後編)

シリーズ「政策起業家Retrospect&Prospect」

三部にわたるインタビューの最終回の今回は、日本の社会課題のこれからと、NPOと政策とのかかわり、 政策人材のキャリアを取り巻く未来像をお話頂きます。

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変わる社会課題と成熟する市場?-多様化する政策人材キャリア

NPOも含め、日本における私たちと政策とのかかわりはどう変わりつつあるでしょうか?

近年では行政のみならず、NPO、あるいは営利企業の側でも、公共政策やルールメイキングに積極的に関わるべきといった問題意識は強まっているように思えます。ある種バブル的な盛り上がりも見せているかもしれません。

NPOが社会課題を解決するための制度化・政策形成に関わるべきという意識は高まっており、新公益連盟などの枠組みはそれを支援しています。また営利企業の側でも、既存のマーケットが成熟していく中で、「非市場戦略」といった議論が盛り上がっています。マーケットが成熟する中で、いかに自らの将来のビジネス環境にとって有利な形で、新しいルール・制度を創れるかといった問題意識ですね。メルカリ、Yahoo、他に海外勢でいえばGoogle、Facebook、AirbnbやUberなど、テクノロジー産業・ベンチャー界隈も、続々政策・ルール形成に参入しています。

いわば、政策人材のキャリアパスの多様化の中、藤沢様からは「NPOからかかわる」選択肢をお話頂いていますが、他のセクターの政策人材の方々との違いとはなんでしょうか?

私たちNPOは社会課題の解決に向けた「手段」として制度化・ルールメイキングをしていく立場であり、ビジネスのためにルール形成に参入してくる営利企業の方々とは、問題意識を共有し、協力できる範囲では協力しつつも、ときに目標や視点が異なることはあります。

個人的には、政策形成に携わる上では、企業の政策担当者以上に、私たちのような立場から関わるのが面白いのではないかと思います。営利企業の方々だと、癒着を巡る批判の問題もあり、政治家の方々と密に連携して制度をつくるるのはやり辛い部分はあるでしょう。また、どうしても自社製品や市場に寄せたロビイングにも近くなる制約条件が出てきます。私たちは、「社会課題の解決のため」という軸を常に崩さないことは意識した上で立ち回らなければなりません。しかし、そうであるからこその、やりがいというのがあると考えています。

社会課題の解決に向けた、NPO起点での政策提言や制度化の重要性が議論されはじめたのは、日本では大体いつ頃からなのでしょうか?

2000年代から2010年代にかけ、各団体でまず自分達の事業モデルを回すことに精一杯で、制度化というところまでは上手く行き着けていなかった。東日本大震災が起きた2011年頃から潮目が変わり、制度化の部分をより意識的に頑張っていかなければならないといけないという方向になっていった

2010年代ぐらいから特に問題意識が強くなり、事業の中でも力点が置かれ始めたのではないかと思います。私自身の実感では、阪神淡路大震災以降、日本で多くのNPOが立ち上がり、社会起業家・社会事業を巡る議論が海外から輸入される中で「民間のビジネスの手法×社会課題解決」という手法がNPO界隈で意識され始めたのが、2000年代ごろです。

ただ、2000年代から2010年代にかけ、各団体でまず自分達の事業モデルを回すことに精一杯で、制度化というところまでは上手く行き着けていなかった。それが、徐々に各NPOの専門性が高まっていき、その上で東日本大震災が起きた2011年頃から潮目が変わり、制度化の部分をより意識的に頑張っていかなければならないといけないという方向になっていった印象があります。

その意味で社会課題解決に向けたNPO起点の政策・ルール形成、そこでのキャリアパスは、日本では今後まさに発展期だと思いますが、業界としての課題と展望はどうでしょうか。

前編でも触れたとおり、多忙な現場でのオペレーションを回しつつ、制度化・ルール形成を積極的に行えるNPOは決して多くはありません。そうした活動ができる団体を、いかに増やしていくかといった点は、今後の一つの大きな課題です。

また「エデルマン・トラストバロメーター」という、世界28カ国3万人以上を対象とし、政府、企業、メディア、NPOの4つのセクターへの信頼度を図る調査があります。この2018年度版によれば、世界の先進国の中で日本だけが、まだ行政に比べNPOの評価・信頼度が低い。日本では未だ、社会的に専門家集団だと思われていない節もあるのかもしれません。

今後は、「NPOの人達が言うのだから!」と、行政からも企業からも信頼される高い専門性や倫理観を、もっと高めていかなければいけません。一朝一夕にという訳にはいきませんが、新公益連盟の枠組みでの支援や、個々団体がベストプラクティスの積み上げを通じて、業界全体でも高めていかなければいけないという課題意識を感じています。

成長産業としての政策形成・ルールメイキング市場-社会課題解決の現場から

最後に、読者の皆さんに、藤沢様から日本の政策形成過程や政策人材をめぐる所感や、社会課題の解決をキャリアにしていきたいという若い方々にメッセージを頂ければ幸いです。

政策形成・ルールメイキングの市場というのは、情報通信産業と並ぶほど、明らかな「成長産業」だと思います。そうした成長産業の中でも、NPOは、特に行政とも企業とも異なるとてもユニークな立場でのキャリアの機会を提供してくれる場所です。新卒でとは言わないまでも、若い人たちには是非この世界に身を投じて貰いたい。

非営利か営利か、セクターを超えて、政策形成・ルールメイキングの市場というのは、情報通信産業と並ぶほど、明らかな「成長産業」だと思います。社会課題の解決においても、例えば人生100年時代の中での社会保障など、いかに従来から大きく変わる社会の中で制度をデザインするかを問われます。ビジネスの世界でも、市場が成熟する中で、既存のモノやサービスを営業するだけでなく、それが売れる市場を創るルールメイキングの力がある人が、ビジネスマンとして今後大成していくでしょう。ルールメイキングの力は、今でいうプロジェクトマネジメント能力や課題解決能力と同じぐらい、今この時代にやりがいを持った仕事をする上での必須スキルになるのではないかと思います。

そうした成長産業の中でも、NPOは、特に行政とも企業とも異なるとてもユニークな立場でのキャリアの機会を提供してくれる場所です。新卒でとは言わないまでも、若い人たちには是非この世界に身を投じて貰いたい。その後政治家になって貰っても良いし、企業に入っても良いし、次のNPOに行ってもらっても良い。私はそうした多彩な人材が、この場から続々と生まれていくことになると信じています。


藤沢様の問題意識やRCFの皆様のご活躍は、2019年9月9日の「政策起業力シンポジウム」2019 においても、引き続きお話頂く予定です。

 

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